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2012年5月25日 (金)

子育ての醍醐味 香山リカのココロの万華鏡

香山リカのココロの万華鏡:子育ての醍醐味

 私は児童精神科医ではないのだが、通院している患者さんからときどきこんなことをきかれる。「先生、私じゃなくてウチの子どものことです。小学生なのですが落ち着きがなくてすぐに木登りをしたがって……。発達障害なのでしょうか?」「中学受験が近いのにマンガに夢中で勉強にあまり関心がないのです。そういう発達障害もあると聞いたのですが」

 たしかに幼児や児童の発達障害は、「早期発見、早期介入が大切」と言われている。早いうちから専門のプログラムに導入することで、コミュニケーションや対人関係の能力に改善が見られる子もいる。とはいえ、私が相談を受けるようなケースでは、子どもたちは乳幼児期健診を受け、小学校でも大きな問題はなく友だちと遊んだり学校行事に参加したりしてきたわけだ。ほとんどの場合で、親が心配しているような問題はないと考えられる。

 以前、ある母親があまりに「本当に心配なんです」と繰り返すので、「もし必要なら専門医を紹介するから一度、連れてきてみては?」と話し、小学4年生の息子を診察室に連れて来てもらったことがあった。初めての診察室で若干、緊張ぎみではあったが、「ゲームが好き」とのことでその話題になるととたんに目が輝いて、あれこれ語り出す。母親が言うような「外の世界にはまったく無関心」「他人との会話が成立しない」などという特徴など、まったく感じられない。

 「あのー、ご心配の発達障害の可能性はないと思います。勉強よりゲームに熱心、ってこの年頃だと誰でもそうだと思いますが……」と正直に伝えると、母親は驚いた顔をした。「えっ! そうなんですか。同級生の多くは塾に通っていて、自分から進んで中学受験したいと言っている子も多いんです。ウチの子だけがやる気がないんですよ」

 それを聞いて、今度は私のほうが驚いた。遊びたいさかりの小学生が自分から塾に行ったり自ら受験勉強したりするだなんて、むしろそっちのほうが心配だ。親や先生の言うことをきかずに困らせたり、おとなの目を盗んで遊んだりするのが、本来の子どもというものなのではないだろうか。もちろん、私もそんな子どもだった。

 わが子が自分の理想や期待と違うのは、親にとっては心配の種だろう。でも、子どものワガママに振り回され、「まったくもう!」とため息ついたりすることこそ、実は子育ての醍醐味(だいごみ)なのではないのか。子どものいない私は、「わが子に手を焼いてみたかったな」とつくづく思うのだ。

 最近うちの息子もワガママになり、振り回されてますな。

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